『耳が良い』の3つの意味

 

『きみ、良い耳してるね』

と言われたとしたら何のことだと想像するでしょうか。

 

『耳が良い』と言われたとしても『耳がどう良いのか?』
その場面によって意味が違ってきます。

思いつく限りでは『耳が良い』の意味は3つあります。(他にも思いつけば書き足しますが)

私はその3つの『耳の良さ』を次のように呼んでいます。

 

① 物理的な耳の良さ
② 音楽的な耳の良さ
③ エンジニア的な耳の良さ

大きく分ければこの3つが『耳の良さ』の全てだと考えられます。

 

①物理的な耳の良さ

 

『物理的』とは何でしょうか。

『物理的』とは一般に、空間・時間・重量など、数量に置き換えられる条件に関連するさま。

とあります。

 

ここでは、多いとか少ないとか、大きいとか小さいとか、強いとか弱いとか、そういった意味合いで使用しています。
『量』や『強さ』に関連するものを表す『物理的』という表現です。

 

「耳」のことであれば、『小さい音でも聞こえる』という耳の良さです。

言い換えれば、『聴力検査でわかる聴力』のことです。

これは小さい音や大きい音だけでなく、低い音や高い音が『どれぐらい聞き取れるか』というものであり、『目』でいえば遠くまでよく見えるということに置き換えられるでしょう。

 

つまりは、量的なものを示しているのが『物理的な耳の良さ』の意味するところです。

 

②音楽的な耳の良さ

 

『音楽的』とはなんでしょうか。

ここでは、『音階的』とも近い表現になります。

音楽家の方は『スケール』の方がイメージしやすいかもしれません。

スケール(scale)は音楽分野において『音階』の意味です。

音階(scale)は音程の規則的な並びのことです。

『ドレミファソラシ』という音程の並び方もスケールの1つです。(他にもたくさんありますが)

堅苦しく言えば、音楽は音の並び方でできており、それがどう並んでいるのかを聴き取れる能力がここで言う『音楽的な耳の良さ』です。

 

「絶対音感」や「相対音感」というのがありますが、どちらも音の高さを認識する能力のことであり、『音楽的な耳の良さ』に当てはめることができます。
ただ「1つの音程を聴いて音の高さがわかるのか(絶対的)」「2つの音を比べて音の高さの距離がわかるのか(相対的)」という違いに過ぎません。

 

『目』で言えば、「ある地点からある地点まで距離がわかる(絶対的)」のと、「自分の位置からある地点まで距離がわかる(相対的)」と言えます。
『絶対距離感』『相対距離感』とでもいうのでしょうか。

余計わかりにくくなりましたね・・・

 

音楽的に耳が良ければどうなるのか。

旋律(メロディ)が聴いてわかる。ハーモニー(和声)が聴いてわかる。
ので音楽的に有利であることは言うまでもありません。

もちろんこの『聴いてわかる』にも程度があり、それが『耳の良さ』の程度であると言えます。

 

『耳コピ(耳コピー)』という言葉があります。『演奏音を聴きとる』という意味です。
もしくは『楽器を鳴らしながらその演奏音を探り当てること』という意味とも観察されます。

これはメロディやハーモニーを探り当てることと同義であるので『音楽的な耳の良さ』があれば、耳コピの能力も優れているということが言えます。

 

つまり、音の高さを聴き取る能力を示しているのが『音楽的な耳の良さ』の意味するところです。

 

 

③エンジニア的な耳の良さ

 

『エンジニア的』とは何でしょうか。

「エンジニア」を直訳すると単に「技術者」という意味です。

ここでは音楽(や音声)分野における技術者という意味で勝手にそう呼んでいます。

例えば、「レコーディングエンジニア」「マスタリングエンジニア」「PAエンジニア」といった音声に関わる技術者に必要な『耳の良さ』という意味です。

彼らはどういった耳を持っているのか。

音の性質を聞きわける耳です。

②の『音楽的な耳の良さ』にも言えることですが、これらは耳が良いというより、聞いた音を読み取る『脳が良い』という表現の方が適切かもしれません。

「①の『物理的な耳の良さ』においても聞いた音は脳で変換されるじゃないか」という考えもあるかもしれませんが、『物理的な耳の良さ』に直接影響するのは耳の機能であるので、脳の良さとは言えません。

 

「この音は1kHzあたりが強いなぁ」とか「アタックが強すぎるなぁ」ということです。

ただ物理的に、100Hzなどの低音がもともと聞こえにくいという方もいます。
そう考えると、いくらエンジニア的な耳といっても、耳の機能が関係ないとは言えません。

いずれも、物理的に聞いてはじめて、脳で変換するという作業が伴うからです。

しかし、物理的な耳の良さとは違い、②の『音楽的な耳の良さ』も③の『エンジニア的な耳の良さ』も厳密には『脳の良さ』といえるものなので、訓練すれば『耳が良くなる』という性質があります。

『物理的な耳の良さ』でいえば、「100Hzが聞こえないから100Hzを聴きまくって聞こえるようにしよう」は絶対とまでは言わなくても基本的に無理です。
しかし②③においては、「②ドとソの音の高さを聴きまくって覚えよう」「③100Hzの音を聴きまくって覚えよう」は無理ではありません。
これが『耳の良さ』と『厳密には脳の良さ』の違いです。

 

つまり、音の性質(周波数やダイナミクス)を聴き取る能力を示しているのが『エンジニア的な耳の良さ』の意味するところです。

 

 

まとめると『耳の良さ』というのは

① 物理的な耳の良さ・・・小さな音を聴きとる能力
② 音楽的な耳の良さ・・・音の高さを聴き取る能力
③ エンジニア的な耳の良さ・・・音の性質を聴き取る能力

という3つに分類できます。

 

 

【お借りした写真】  山梔子(くちなし) @h_k___さんより

 

 

番外編

 

言葉のあやではありませんが、もう1つの「耳の良さ」がありました。

④『身体的な耳の良さ』です。

ここでいう『身体的』とはビジュアル(視覚的)のことです。

美しい形の耳だとか、福耳だとか、『見た目が良い耳』ということです。

音楽分野において関係あるとしても、その名の通りビジュアル系ぐらいでしょうか。

この『身体的な耳の良さ』は個人の好みによるところではありますが、その個人にとってはその対象の『耳が良い』ことには変わりないので、4つ目の『耳の良さ』として心倉庫にしまっておこうと思います。